北杜市ハザードマップで移住前に知るべき災害情報と活用術
「自然豊かな北杜市への移住を考えているけれど、災害リスクは大丈夫なのだろうか」このような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
八ヶ岳南麓に位置する北杜市は美しい自然環境が魅力的な一方で、地形的特徴から土砂災害や洪水などの自然災害リスクも存在します。安全で安心な移住を実現するためには、事前に地域の災害情報を正確に把握することが欠かせません。北杜市が公表しているハザードマップを活用すれば、移住候補地の災害リスクを客観的に評価できるようになります。
この記事では、ハザードマップの基本的な見方から地区別の災害リスク分布、不動産選びで確認すべきポイント、移住後の防災対策まで、北杜市の災害情報を総合的にご紹介します。適切な情報収集により、安全性を考慮した移住計画を立てることができるでしょう。
目次
北杜市ハザードマップの基本情報と災害種別
ここでは、北杜市で想定される主要な災害リスクと、行政が公表しているハザードマップの活用方法について詳しく解説します。八ヶ岳南麓という地理的特性から、土砂災害と洪水という2つの主要なリスクがあり、それぞれについて適切な理解を深めることで、安全な移住計画の立案が可能になります。
行政が指定する土砂災害警戒区域の定義と基準
土砂災害防止法に基づき、山梨県では詳細な地形調査と科学的解析により土砂災害警戒区域を指定しています。
警戒区域は危険度により2つに分類されており、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)では、土石流や地すべり、急傾斜地の崩壊による被害のおそれがある区域として指定されています。一方、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、建築物に損壊が生じ住民に著しい危害が生じるおそれのある区域です。
山梨県では傾斜度30度以上で高さ5メートル以上の急傾斜地や、土石流の発生する可能性がある渓流等を対象に現地調査を実施し、地質や過去の災害履歴なども考慮して指定しています。特別警戒区域(レッドゾーン)では一定の建築制限が設けられており、移住者は事前に建築可能な構造や開発規制について確認する必要があります。

洪水予報河川と水位周知河川の指定状況
北杜市を流れる主要河川では、それぞれ異なる管理体制で洪水リスクの監視と情報発信が行われています。
富士川(釜無川含む)は国土交通省管理の洪水予報河川として指定されており、甲府河川国道事務所と気象庁が共同で洪水予報を発表しています。一方、塩川は山梨県管理の洪水予報河川として、山梨県中北建設事務所と甲府地方気象台が連携して情報提供を行っています。
洪水予報河川では、水位の上昇に応じて氾濫注意情報から氾濫発生情報まで段階的に発表され、住民の避難行動の判断材料となります。両河川とも想定最大規模降雨による浸水想定区域が設定されており、流域の集落では浸水深や浸水継続時間などの詳細な情報が公表されています。移住前には候補地が浸水想定区域に含まれているか必ず確認しましょう。
北杜市WEB版ハザードマップの見方と使い方
北杜市公式WEBサイトで提供されているハザードマップは、災害リスクの確認に欠かせない重要なツールです。
WEB版ハザードマップでは、画面のレイヤー選択で土砂災害警戒区域と洪水浸水想定区域を切り替えて表示できます。住所検索機能を使用すると、調べたい場所を素早く見つけることが可能で、地図の拡大縮小により詳細な情報まで確認できます。
特に移住候補物件周辺では、最大倍率まで拡大して警戒区域の境界線を正確に把握することが重要です。ただし、ハザードマップの情報のみで物件の安全性を判断するのは適切ではないため、詳細については山梨県や北杜市の担当窓口に問い合わせることをおすすめします。

地区別の行政指定区域分布状況と特徴
ここでは、北杜市8地区における災害リスクの分布状況を、山梨県が公表している行政データに基づいて詳しく解説します。各地区の地形的特徴と災害指定区域の関係を理解することで、移住先選択時により適切な判断ができるようになります。
明野・須玉・高根・長坂地区の指定状況
明野・須玉・高根・長坂地区は、茅ヶ岳エリアと八ヶ岳南麓の一部を含み、地形の多様性により土砂災害警戒区域や洪水浸水想定区域の分布も異なります。北杜市公式ハザードマップ等で詳細な指定状況を確認できます。
明野地区は茅ヶ岳南麓の台地状地形が特徴ですが、複数の字名で土砂災害警戒区域に指定されています。一方、須玉地区では奥秩父山塊からの谷地形により、塩川上流域を中心に土砂災害警戒区域が分布しており、特に増富温泉周辺では注意が必要です。
高根地区は八ヶ岳南東麓の緩やかな傾斜地が多く、清里高原周辺では別荘地としての人気が高いものの、一部で土砂災害警戒区域に指定されているエリアが存在します。長坂地区では八ヶ岳南麓の扇状地形により、比較的安全なエリアが多い一方で、山間部では警戒区域の指定があります。物件選びでは各地区の地形的特徴を踏まえた確認が重要です。
大泉・小淵沢・白州・武川地区の指定状況
八ヶ岳南麓の傾斜地と南アルプス前山を含むこの4地区では、急峻な地形による土砂災害リスクが顕著に現れています。
大泉地区は八ヶ岳南麓の代表的な別荘地エリアであり、傾斜地が多いことから土砂災害警戒区域が広範囲に指定されています。小淵沢地区では八ヶ岳南西麓の急傾斜地を中心に土砂災害警戒区域が指定されており、一部地域では特別警戒区域(レッドゾーン)も存在します。人気の高いエリアですが、慎重な検討が必要です。
白州地区は甲斐駒ヶ岳からの急流河川が多く、尾白川などの河川沿いでは浸水想定区域と土砂災害警戒区域の両方が指定されている場所があります。武川地区では南アルプス前山の地形的影響により、山間部での土砂災害リスクが高く、釜無川流域では洪水リスクも考慮する必要があります。
これらの地区では、自然環境の魅力とハザードマップ等で確認できる災害リスクの両面を踏まえ、十分な検討が重要です。
各地区の浸水想定区域と土砂災害警戒区域
北杜市全体の災害リスク分布を統計的に分析すると、地形的特徴に応じた明確な傾向が確認できます。
地区分類 | 土砂災害警戒区域 | 浸水想定区域 | 主要リスク |
茅ヶ岳エリア(明野・須玉) | 複数箇所指定あり | 塩川流域 | 河川氾濫 |
八ヶ岳南麓エリア(高根・大泉・長坂・小淵沢) | 広範囲 | 扇状地の一部や扇端部を含む | 土砂災害 |
南アルプスエリア(白州・武川) | 山間部中心 | 釜無川流域を中心に浸水想定区域 | 土砂災害と洪水の複合リスク |
富士川(釜無川)と塩川の流域では、想定最大規模降雨により浸水深3メートル以上となる区域も存在し、特に河川合流点周辺では注意が必要です。八ヶ岳山麓では緩傾斜地でも土砂災害警戒区域に指定されている場所があり、別荘地や移住人気エリアでの物件選択時には必ずハザードマップでの確認を行いましょう。
地区選択の際は、アクセスの良さや生活利便性だけでなく、北杜市公式ハザードマップ等で確認できる災害リスクレベルも重要な判断基準として位置づけることが、安全な移住計画につながります。

不動産選びで確認すべき行政情報一覧
ここでは、北杜市での物件選択時に確認すべき行政情報を包括的に解説します。ハザードマップだけでなく、法的義務や建築制限など多角的な確認により、安全で安心な不動産選択が可能になります。
重要事項説明で義務化された水害リスク項目
2020年の宅地建物取引業法改正により、不動産取引における水害リスクの説明が法的に義務化されました。
不動産業者は重要事項説明において、水防法に基づき作成された水害ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すことが義務づけられています。また、土砂災害警戒区域・特別警戒区域に該当する場合も別途説明されます。
浸水深の程度などハザードマップに記載された内容については、不動産業者によって補足的に説明されることがありますが、法的には義務ではありません。移住者側としては、説明を受けた際に、最新のハザードマップで該当状況を再確認し、過去の災害履歴について質問し、警戒区域に該当する場合は建築制限の有無を確認しましょう。重要事項説明書には水害リスクや土砂災害リスクに関する情報が記載されるため、契約前に必ず内容を精査することが大切です。

山梨県と北杜市への行政窓口での問合せ方法
災害リスクに関する詳細な行政情報は、直接担当部署に問い合わせることで確実な情報収集が可能です。
担当機関 | 部署名 | 主な業務内容 | 連絡先・受付時間 |
山梨県 | 砂防課 | 土砂災害警戒区域指定・砂防事業 | 平日8:30-17:15 |
北杜市 | 消防防災課 | 地域防災計画・避難所指定 | 平日8:30-17:15 |
北杜市 | まちづくり推進課 | 建築制限・開発許可 | 平日8:30-17:15 |
問い合わせの際は、物件の住所や地番を正確に伝え、土砂災害基礎調査結果、過去の災害記録、避難所指定状況、建築制限の有無について具体的に質問しましょう。電話での初回確認後、詳細資料が必要な場合は窓口での相談や資料請求も可能です。
WEBサイトからも基本的な情報は入手できますが、個別物件に関する詳細なリスク情報や建築制限の有無などは、直接行政窓口へ問い合わせることでより確実に確認できます。
ハザードマップ以外で確認すべき行政資料
移住判断の精度を高めるためには、ハザードマップと併せて複数の行政資料を確認することが重要です。
北杜市地域防災計画では、市全体の災害対策方針や避難体制が詳細に記載されており、災害発生時の対応や地域防災の枠組みを把握できます。土砂災害基礎調査結果には、ハザードマップには表示されない詳細な地形データや地質情報が含まれる場合があり、より精密なリスク評価に役立ちます。必要に応じて行政窓口に問い合わせて入手してください。
河川整備計画では、富士川(釜無川)や塩川の治水対策の進捗状況や将来計画を確認できますが、直近の安全性向上には限界がある場合もある点に留意が必要です。また、避難所一覧では最寄りの指定避難所の位置や収容人数、過去の災害記録では地域で発生した実際の被害状況を確認できます。
これらの資料は北杜市公式サイトや山梨県防災ポータルサイトで公開されている場合と、行政窓口での問い合わせが必要な場合があります。総合的な安全性評価に活用しましょう。
移住後の災害情報収集と安全対策の進め方
ここでは、北杜市への移住後に構築すべき災害情報収集体制と安全対策について実務的に解説します。継続的な情報収集と事前準備により、安全で安心な移住生活の基盤を構築できます。
行政からの災害情報配信サービスと登録方法
北杜市と山梨県では、住民向けの災害情報配信サービスを提供しており、移住後の早期登録が重要です。
「北杜ほっとメール」は北杜市の公式情報配信サービスで、気象警報や避難情報、防災行政無線の内容も受信できます。登録方法は北杜市公式サイトの専用フォームから、受信したいメールアドレスを登録し、災害情報や防犯情報、交通安全情報などのカテゴリを選択したうえで登録を完了させる山梨県では「やまなし防災ポータル」で県内全域の災害情報を提供しており、土砂災害警戒情報や河川水位情報、地震や火山情報など多様な防災関連情報が確認できます。
また、気象庁の「気象警報・注意報」や「キキクル(危険度分布)」、Yahoo!防災速報なども併せて活用し、多角的な情報収集体制を整備しましょう。
災害時の避難場所と避難経路の事前確認方法
移住後の安全確保には、具体的な避難計画の事前策定が不可欠です。
北杜市では各地区に指定避難所が設置されており、市公式サイトの「避難所一覧」から施設名や所在地、収容人数などの詳細情報が確認できます。自宅から避難所までの経路は複数設定し、土砂災害や浸水リスクを考慮したルート選択が重要です。
災害種別ごとの避難タイミングについては、土砂災害では警戒レベル3(高齢者等避難)やレベル4(避難指示)発令時、洪水では氾濫警戒情報や警戒レベル3(高齢者等避難)、レベル4(避難指示)発令時を目安に、早めの避難行動を心がけましょう。自宅や周辺が安全な場合は在宅避難や分散避難も検討してください。
家族での避難計画作成では、連絡方法、集合場所、持参品リストを事前に決めておき、年2回程度の見直しを実施することをおすすめします。在宅避難や分散避難が可能な場合は、その選択肢も計画に含めましょう。
地域の自主防災組織への参加により、近隣住民との連携体制も構築でき、より実践的な防災スキルを身につけることができます。

まとめ
最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございます。北杜市への移住を検討される皆様にとって、災害リスクに関する正確な情報は安全で安心な生活の基盤となります。この記事では、ハザードマップの活用方法から移住後の防災対策まで、移住前後に必要な災害情報を総合的にご紹介いたしました。ここで改めて、記事の重要なポイントをまとめさせていただきます。
- 北杜市では土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と特別警戒区域(レッドゾーン)、洪水浸水想定区域が指定されており、WEB版ハザードマップで詳細な確認が可能
- 8地区それぞれで災害リスクの特徴が異なり、八ヶ岳南麓エリアでは土砂災害、河川流域では洪水リスクを重点的に確認する必要がある
- 2020年改正宅建業法により水害リスクの説明が義務化されており、重要事項説明では最新ハザードマップでの該当状況確認が重要
- 山梨県砂防課や北杜市消防防災課への直接問い合わせにより、詳細な行政資料や建築制限情報を入手できる
- 移住後は「北杜ほっとメール」登録と避難計画策定により、継続的な安全対策が実現可能
北杜市の豊かな自然環境を享受しながら安全に暮らすためには、災害リスクを正しく理解し、適切な準備を行うことが大切です。ハザードマップを始めとする行政情報を有効活用し、不動産選びから移住後の防災対策まで段階的に取り組むことで、安心できる移住生活の実現につながります。詳しい情報については、北杜市公式サイトや各行政窓口でご確認いただき、皆様の移住計画にお役立てください。